【1分で解説!】大阪の老舗傘工房が生み出した、世界に類を見ない傘
ー サイレントアンブレラ ー
大阪市阿倍野区に工房を構える丸安洋傘株式会社が開発した「サイレントアンブレラ」が、国内外から大きな注目を集めています。1966年(昭和41年)の創業以来、100以上の工程をすべて職人が手作業でこなしてきた老舗工房が、視覚障がいのある方の切実な声をきっかけに約18年の歳月をかけて完成させた傘です。2026年6月には日本テレビ系「情熱の雫」でも特集が組まれ、関東圏でも広くその存在が知られるようになりました。
この傘の核心にあるのは、雨音を30〜35%カットするという画期的な二重構造の設計です。視覚障がい者にとって、雨音は文字通り「目」の代わりとなる周囲の音をかき消す障害です。信号機の音、後方からの自動車の接近音、白杖が地面に当たる音——これらすべてが傘の雨音に遮られてしまう。その課題に真正面から向き合ったのが、丸安洋傘のサイレントアンブレラです。本記事では、この傘が持つアドバンテージを多角的に掘り下げ、なぜ海外からも問い合わせが寄せられるようになったのかを解説します。
サイレントアンブレラのアドバンテージ――視覚障がい者が「耳で世界を読む」ために
雨音を30〜35%カット:図書館並みの静けさへ

一般的なビニール傘に雨が当たるときの音量は50〜60デシベルとされています。これはちょうど普通の会話や室内の環境音に相当する音量です。サイレントアンブレラはこの雨音を30〜35%カットし、図書館の室内(30〜40デシベル程度)に近い静けさを実現します。
ユーザーはその音を「パサッパサッ」という雪が降り積もるような音、あるいは線香花火のような音と表現します。小雨のときはほとんど雨音が聞こえず、強い雨でも小雨程度の感覚です。この「静けさ」が、視覚障がい者の方々にとって何を意味するかは計り知れません。後方からの自動車の接近音が聞き取れる。音響信号機の音が明確にわかる。会話相手の声が雨音に遮られない。これらはすべて、安全な移動と日常生活の自立に直結する機能です。
蛍光色の露先(つゆさき):視認性への配慮
サイレントアンブレラのもう一つの工夫は、傘を開いたときに最も外側に出る「露先」の色にあります。視覚障がいのある方でも見やすいよう、蛍光色の黄色が採用されています。傘を使用中に人や物にぶつかるリスクを下げる、ユニバーサルデザインの発想です。落ち着いた色合いを希望する場合は黒色の露先も選択できます。
日傘・遮熱としての性能
この傘の二重構造は、晴天時にも威力を発揮します。内側温度が一般の日傘と比べて10度以上低くなる遮熱効果があり、木陰に入ったような涼しさを感じられます。紫外線遮蔽率は高密度織で99.5%、遮光率は97.5%に達します。雨の日だけでなく、夏の日差しが強い日の外出やスポーツ観戦など、幅広い場面で活用できる晴雨兼用傘です。
修理ができる傘:SDGsの観点でも評価
日本で消費される傘の大半が使い捨てである現状の中、サイレントアンブレラは修理対応が可能です。職人が手作りした傘だからこそ実現できる修理体制は、長く愛用できることを意味し、環境負荷の低減にもつながります。傘の内側に丸安洋傘の連絡先が記載された白ラベルが縫い付けられており、修理依頼の窓口も整備されています。
開発の原点――一本の電話と、18年間の試行錯誤
サイレントアンブレラが誕生するきっかけは、先代社長の時代に視覚障がいのある方からかかってきた一本の電話でした。「雨の音が静かになる傘をつくってもらえないか」という相談です。当初、工房の人々はなぜそのような傘が必要なのかがわかりませんでした。
話を聞いて、初めて事態の深刻さを知ります。視覚障がい者にとって、雨の日の外出は命がけとも言える行為です。普段は自動車の走行音、白杖が路面に当たる音、音響式信号機の電子音——これらすべてが「耳の目」として機能しています。ところが傘をさすと、雨粒が傘に打ちつける音がこれらを完全にかき消してしまいます。大阪南視覚支援学校の全盲の教師・丸谷賢司さんは、関西テレビのインタビューで「雨の激しい日には、道の右側を歩いているつもりが、いつの間にか左端に移動していた」という危険な経験を語っています。
この深刻な現実を知った丸安洋傘は、すぐに開発に取り掛かりました。しかし製品化への道のりは長く、約18年の歳月を要しました。試行錯誤の末にたどり着いた答えは、外側のメッシュ生地と内側の通常の傘生地を組み合わせた「二重構造」です。外側のメッシュ生地が雨粒をいったん受け止めて細かくし、内側の生地との間に計算された空間を設けることで、雨音が穏やかに変化する仕組みを実現しました。2023年10月、ついに「サイレントアンブレラ」として世に送り出されます。
テレビ特集が生んだ反響――NHK・関テレ・そして日本テレビ「情熱の雫」へ
サイレントアンブレラが広く知られるようになった背景には、テレビメディアの役割があります。2023年にはNHKが「視覚障害者の声から生まれた雨音の静かな傘」として全国放送で紹介し、大きな反響を呼びました。2024年7月には関西テレビ(カンテレ)が特集記事と動画で詳しく取り上げ、愛用者の丸谷賢司さんのリアルな声も届けました。さらに2026年6月には、日本テレビ系の「情熱の雫」でも特集が組まれ、関東圏でも広くその名が知られることになりました。番組のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
こうした全国規模のメディア露出により、注文数は急増しています。また、海外メディアからの問い合わせも届いており、イギリスのメディアが実際にサイレントアンブレラの提供を求めたことも確認されています。消費者からは「視覚障がいの方にとって命に関わる問題だと初めて知った」「思いやりの傘だと思った」という感謝の声が多数届いており、障がいのある方に限らず、聴覚過敏の方や音楽関係者など新たなユーザー層からの注文も増えています。また、「大阪製ブランド」のベストプロダクト認定を受けるなど、公的な品質評価においても高い評価を得ています。
海外からの問い合わせが増えている理由――「ユニバーサルデザイン×Made in Japan」の訴求力
世界的に見ても、視覚障がい者のための日用品開発は長年の課題です。障がい者の社会参加促進を目指す政策が進む欧米・アジア各国において、日常の移動における安全性の向上は喫緊のテーマです。その中で、使いやすさと安全性を両立した日本製の工芸品クオリティの傘として、サイレントアンブレラは独自のポジションを持ちます。
海外の視覚障がい者支援団体・福祉機器の輸入業者・小売バイヤーが関心を寄せるのは自然なことです。また、日本の傘文化・匠の技・デザイン性への関心は、インバウンド需要や越境ECを通じて広がっており、サイレントアンブレラはその文脈とも重なります。
こうした海外からの関心に応えるべく、Leapでは丸安洋傘様のグローバル向けウェブサイトの制作を手掛けました。英語圏をはじめ世界各国のバイヤーや消費者が丸安洋傘の世界観とサイレントアンブレラの価値に触れられるグローバルサイトは、こちらからご覧いただけます。
ただし現状の課題は、さらなる多言語展開と継続的な情報発信の強化です。英語圏・欧州・アジア諸国のバイヤーや消費者が自社で検索をかけても、十分な情報に辿り着けないケースがまだ多い。そこに、多言語対応のウェブマーケティングが必要とされる理由があります。
丸安洋傘株式会社とは――1966年創業、職人の手と技術が生きる工房

大阪市阿倍野区天王寺町北。JR寺田町駅から徒歩2分ほどのところに、昭和の空気が漂う工房があります。棚には傘のパーツが丁寧に整理され、熟練の職人が黙々と手を動かしている。それが丸安洋傘の日常風景です。
同社は1966年の創業以来、一貫して高品質な日本製の傘を作り続けてきました。傘づくりはかつて分業制が主流でしたが、10年ほど前から担い手の職人が減少し、分業制が成り立たなくなってきた。そこで丸安洋傘は、従来手がけていなかった工程も自社で習得し、裁断から仕上げまですべてを一貫して手作りする体制を整えました。
現在は代表取締役の川口弘幸氏を含む約10名の体制で傘を製造しています。100以上の細かな工程を経て完成する手作り傘は、1日に作れる本数に限りがあります。サイレントアンブレラに至っては、職人の高齢化による生産体制の制約から1日3本が限界という状況です。それだけに、一本一本に職人の技術と思いが凝縮されています。
日本で年間消費される傘は約1.2〜1.3億本。そのうち6割近くを使い捨てのビニール傘が占め、市場の9割以上が海外製とも言われます。そんな業界の中で、丸安洋傘は「日本の傘づくりの技術が詰まった傘」を作り続け、ギフトカタログの人気商品としても高い評価を受けてきました。そして、その手作りの技術の積み重ねが、世界初とも言えるサイレントアンブレラを生み出す土台になりました。
よくある質問(FAQ)
Q1. サイレントアンブレラは視覚障がいのある方だけを対象にした傘ですか?
視覚障がいのある方のニーズを起点に開発されましたが、あらゆる方が使える傘です。聴覚過敏の方、音響・収録・実況放送に関わるプロフェッショナル、雨音の中でも会話をしたい方、静かな環境を好む方など、用途は幅広くあります。関テレの報道によれば、聴覚過敏の方からの問い合わせが増えていることも確認されており、障がいの有無を問わず「音の環境を整えたい」すべての人に対応できる傘です。
Q2. 手作りで価格が高めですが、それだけの価値がありますか?
100以上の工程を経て製造される日本製の傘であり、修理対応も可能です。大量生産のビニール傘とは根本的に異なる「長く使える傘」として設計されています。弱視の生徒が初めて体験した際に「音が消えた」と笑顔で話したという事実が、その価値を端的に示しています。また、社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合の用具購買所での取り扱いも始まっており、公的機関からも品質・有用性が認められています。
Q3. 海外からの問い合わせや販売展開は進んでいますか?
イギリスのメディアから問い合わせが届き実際に製品を送るなど、海外からの関心は着実に高まっています。Leapが手掛けたグローバルサイトの公開により、海外からのアクセス導線も整備されました。現在は多言語対応のウェブ発信を強化したり、海外の展示会への出展を検討するなど、少しずつ販路の構築を進めているところです。「ユニバーサルデザイン×Made in Japan」という唯一無二の訴求軸は、欧米・アジア市場でも十分な競争力を持ちます。
まとめ:「思いやり」から生まれたイノベーションを、世界へ届けるために
視覚障がいのある方の一声から始まり、18年の試行錯誤を経て完成したサイレントアンブレラ。それは単なる「音の静かな傘」ではありません。耳で世界を読み、音で安全を確保する人々のために、傘職人が真剣に向き合った答えです。NHK・関西テレビ・日本テレビ「情熱の雫」など国内メディアでの反響はもちろん、イギリスのメディアからの問い合わせが届くほど、その価値は国境を越えて認められつつあります。
「大阪製ブランド」のベストプロダクト認定、日本視覚障害者団体連合の公式取り扱い開始——これほどの実績と物語を持つ製品が、今なお十分な英語・多言語情報なしに発信されているのは、もったいないことです。越境ECや多言語対応ウェブマーケティングを通じて世界の顧客に届く仕組みを整えることで、丸安洋傘のサイレントアンブレラはさらに大きな社会的インパクトを持ちうるはずです。
Leapでは、丸安洋傘様のような優れた日本の製品・技術を持つ中小企業が海外に向けて情報発信を強化するための、多言語HP・ECサイト作成および海外ウェブマーケティング支援を提供しています。「自社の強みを海外に届けたい」「英語圏・欧州・アジアのバイヤーや消費者にアプローチしたい」とお考えの企業様は、ぜひLeapにご相談ください。 海外ビジネスに役立つ情報を幅広く発信しています。