海外営業マニュアル

海外営業25年のプロが語る、中小企業が新興国市場で成功するための「泥臭い」鉄則

読了時間: 約 5.348分

Leap 編集部
Leap 編集部
海外ビジネスのエキスパートチーム
海外営業25年のプロが語る、中小企業が新興国市場で成功するための「泥臭い」鉄則

現在、円安を背景に多くの日本企業が海外市場への進出を加速させています。しかし、アフリカや東南アジアなど、未開拓の市場には現地の商習慣や地政学リスク、文化の壁といった、日本では想像し得ないハードルがいくつも存在します。

今回は、プラント系部品・メンテナンス業界で25年にわたり海外営業の最前線に立ち続けてきた中澤仁一氏にインタビューを行いました。政府開発援助(ODA)案件から現地法人の立ち上げ、多宗教が混在する現場のマネジメントまで、実体験に基づいた「海外ビジネスのリアル」を紐解きます。


中澤 仁一(なかざわ じんいち)氏

プラント系のメンテナンスおよび輸出業務に従事。海外営業として約30年のキャリアを持ち、現在は円安のメリットを活かした海外工事事業を主導している。アフリカ諸国でのODA案件から、ベトナム、スリランカ、バングラデシュ、中東、南洋諸島まで、世界各地の現場で指揮を執ってきた。現場での実務からマーケティング、輸出入業務まで海外ビジネスの全工程に精通している。


海外販路開拓の鍵:有力な建設業者と「コネ」の活用

海外進出を検討する際、多くの企業が直面するのが「どうやって最初の顧客を見つけるか」という課題です。中澤氏は、闇雲に営業をかけるのではなく、すでに現地で力を持っている建設業者や有力者とのネットワークを構築することの重要性を強調します。

特にインフラに関わる案件の場合、ゼロから需要を創出するよりも、受注が確定している代理店や子会社に対して迅速に必要資材を供給する体制を整える方が確実です。ここで鍵となるのは、単なる取引先としてではなく、現地の事情に精通し、強い発言権を持つパートナーを見つけ出すことです。

アフリカなどの市場では、ODA(政府開発援助)案件に食い込むことで、初期の赤字リスクを抑えながら実績を作ることが可能です。実際に中澤氏が関わったプロジェクトでは、元請けとしてODA案件を遂行することで安定した事業基盤を築きました。一方、JV や下請けとして参画する場合でも、大手ゼネコンとの信頼関係があれば、現地の不安定な経済状況に左右されにくい安定した受注が見込めます。


地政学と物流のリスク管理:供給網を止めないための視点

海外ビジネス、特に新興国においては、日本では想定外の地政学的変動がダイレクトに事業へ影響します。中澤氏の経験では、イラン情勢の悪化による原油不足がスリランカのプロジェクトを停滞させたり、ベトナムでの物流網を混乱させたりといった事態が頻発しています。

こうした不可抗力への対策として重要なのは、供給網の多角化と現地の物流特性の把握です。例えば西アフリカ市場は、中東情勢への依存度が比較的低いため、アジアで物流が滞っている際のリスクヘッジ先として機能することもあります。

また、物流インフラが未整備な内陸国においては、オンタイムで荷物が届くことを前提にした計画は禁物です。国によって異なる通関のスピードや輸送ルートの状況性を熟知し、余裕を持った在庫管理と納期設定が求められます。パンデミックや急激な運賃の高騰など、供給が止まってしまう要因は常に潜んでいるという前提で動くことが、プロジェクトの崩壊を防ぐ唯一の方法です。


現場の士気を左右する多文化・多宗教への深い理解

海外で事業を成功させるのは、システムや製品の質だけではありません。最終的には「現場の人間がいかに動いてくれるか」にかかっています。ここで中澤氏が苦労を重ねたのが、宗教上の違いによる生活習慣の差でした。

特に仏教徒とイスラム教徒が混在する現場では、食事の配慮や祈りの時間の確保が不可欠です。例えばバングラデシュの下請け業者と現場で協働する際、慣れない土地でも彼らが安心して働けるよう、専用のキッチンを別途設営するといった細やかな対応が求められます。

こうした配慮をコストと捉えるか、円滑な運営のための投資と捉えるかで、現地の協力体制は大きく変わります。宗教や文化の壁を軽視せず、現地の目線に合わせて環境を整えることが、結果として高い品質管理と信頼関係の構築に繋がります。


10年スパンで捉える海外事業の黒字化とマーケティング

中小企業の経営者にとって最も気になるのは投資の回収時期でしょう。中澤氏によれば、現地法人が黒字化するまでには10年以上の歳月を要したといいます。立ち上げ初期の苦労を耐え抜くためには、中長期的な視点と、並行して行う地道なマーケティング活動が不可欠です。

中澤氏は営業活動の傍ら、自らウェブサイトの立ち上げやプロモーションビデオの作成、展示会用のチラシ制作まで幅広く手掛けてきました。また、日本製品を売るだけでなく、ヨーロッパのメーカーから優れた部品を輸入する担当も兼任し、双方向の貿易ルートを確保することで事業の幅を広げています。

デジタルを活用した発信は、遠く離れたクライアントに対して自社の管理体制を可視化する有効な手段です。言葉の壁があるからこそ、動画や視覚的な資料を通じて、日本の高い品質基準を伝える努力を惜しんではいけません。


まとめ:信頼を築くのは「高い品質管理」と「現場への歩み寄り」

中澤氏の25年にわたる経験から導き出される結論は、非常にシンプルです。それは、徹底した品質管理で信頼を築き、現地の文化に深く歩み寄るということです。

共同事業(JV)が思うように進まなかったり、予期せぬ情勢不安でプロジェクトが中断したりすることは、海外ビジネスにおいて避けては通れないリスクです。しかし、有力なパートナーを見極める目を持ち、現地のスタッフが誇りを持って働ける環境を整え、10年先を見据えた粘り強さがあれば、必ず道は開けます。

円安という輸出に有利な状況を追い風に、まずは確かなコネクションを持つことから始めてみてはいかがでしょうか。現場の泥臭い苦労を厭わない姿勢こそが、海外市場という広大なフロンティアを切り拓く最強の武器となります。

この記事をシェアする

Leap global business

Leapでグローバルに
飛躍しましょう。

海外売上を伸ばすためのオールインワンツール

多言語HP作成、越境ECの開設・運用、多言語コンテンツ制作、海外向けSNS運用、そして現地の代理店マッチングまで。
Leapなら、複雑な海外展開のプロセスを一元管理し、効率的に海外売上を拡大させることができます。

リンクをコピーしました