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ベトナム製造業向けBtoB成功事例── 「低価格志向」を超える価値訴求の型

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Leap 編集部
Leap 編集部
海外ビジネスのエキスパートチーム
ベトナム製造業向けBtoB成功事例── 「低価格志向」を超える価値訴求の型

【1分で解説!】ベトナムBtoB市場、勝てる会社と負ける会社の分岐点

「ベトナムは低価格競争が激しく、日本企業には不利」──そう考えて二の足を踏んでいる方も多いかもしれません。しかし実際には、品質・信頼・長期的なパートナーシップを軸に価値を訴求した日本企業が、中国・韓国・地場企業との競争を制する事例が続々と生まれています。本記事では、ベトナム製造業向けBtoB市場の実態と購買決定要因を整理した上で、Webマーケティングの浸透度、そして「日本品質」を武器に市場適合を果たした具体事例を深掘りします。低価格競争に巻き込まれずに売れる仕組みを、今すぐ理解していただける内容です。

ベトナム製造業市場の現在地── 日系企業が直面する構造変化

ベトナムは中国プラス・ワン戦略の筆頭受け皿として、日系製造業の進出が急拡大しています。外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」によれば、2022年時点のベトナム国内の日系企業拠点数は約2,400拠点。中でも製造業が全体の約48%を占め、2社に1社が製造・生産に関わる事業を営んでいます。国際協力銀行(JBIC)の調査では、中期的に有望な事業展開先としてベトナムを選んだ製造業企業の得票率が30.1%に達し、インドに次ぐ2位にランクインしています。

一方で、市場環境は急速に変化しています。JETROの「2023年度海外進出日系企業実態調査」によれば、在ベトナム日系企業のうち「販売機能を拡大する」と回答した企業は62.0%に達しており、5年前(2018年)の46.8%から大幅に上昇しています。これは、これまでの「生産拠点として活用」というスタンスから、「ベトナム国内市場でも売っていく」という方針への転換を意味しています。

しかし、この競争激化の渦中で、見落とされがちな重要な事実があります。JETRO調査で在ベトナム日系企業のBtoBターゲット層を尋ねたところ、86.3%が「進出日系企業」と回答しており、「地場企業」をターゲットとする企業は49.9%にとどまっています。ベトナムには約90万社の企業が存在する一方で、日系企業は2,500社前後。大多数を占める地場企業・非日系外資との取引なくして、今後の飛躍は難しいのが実情です。

「低価格競争」は誤解だった── ベトナムBtoBの購買決定要因

価格よりも「信頼と品質」が購買を動かす

「ベトナムは安さで選ぶ市場」というイメージが先行しがちですが、BtoB製造業の購買決定においては、その認識は正確ではありません。JETROが2025年初頭にベトナム進出の日系企業にヒアリングを行った調査では、ある日系部品サプライヤーの社長がこう語っています。「お客様の生産がベトナムに集まる流れの中で、『近くで作ってくれるところが安心、安全で良い』というお声を多数いただいている。日本品質で供給してくれる企業が求められている」と。

また、ベトナムのBtoBビジネスは儒教的な価値観の影響を色濃く受けており、「人と人との信頼関係」を前提にビジネスが進む傾向があります。単に価格や仕様を提示するだけでなく、初回商談から関係構築を丁寧に積み重ねる姿勢が、長期的な取引につながる文化があります。特に、既存の取引先や業界内ネットワークからの「紹介」が商談のスタートになるケースが多く、信頼された第三者からの推薦は非常に重い意味を持ちます。

JETROの報告では、コスト削減(34.2%)を上回る形で「営業・広報の強化」(45.5%)と「製品・サービスの多角化」(34.8%)が、在ベトナム日系企業の競争対応策の上位に挙がっています。これは、価格競争に終止符を打ち、付加価値で戦う姿勢が日本企業の主流になりつつあることを示しています。

中国企業が脅威である本当の理由

中国企業の台頭を懸念する声は多いですが、その脅威の本質は「安さ」よりも「適応スピード」にあります。パナソニック エレクトリックワークスベトナムの現地販売代理店Nanocoグループのルーン・リュク・ヴァンCEOはこう語ります。「中国企業の真の強みは、現地で流通している製品を凄まじいスピードで学び、コピーし、アレンジしてくること。だから、顧客が欲しい製品を素早く提供できる」と。

この言葉は、日本企業への警告であると同時に、方向性を示してもいます。速度で競うのではなく、「品質の一貫性」「アフターサービスの確かさ」「長期間にわたる供給安定性」という領域で価値を構築することが、日本企業がとるべき差別化の型です。

実例で読み解く── 「低価格志向」を超えた価値訴求の型

パナソニック エレクトリックワークスベトナム:品質×ローカライズ×アフターで市場シェア5割

ベトナムBtoB製造業における最も象徴的な成功事例が、パナソニック エレクトリックワークスベトナム(PEWVN)です。同社は配線器具・照明・IAQ機器を製造・販売しており、2014年にビンズオン省で工場を本格稼働。わずか3年後の2017年には、ベトナム国内の配線器具シェアで1位を獲得しました。

売上高の推移は、成長の速さを物語っています。2007年に11億円だった売上は、2017年に144億円、2023年には222億円に達しています。同社General Directorの坂部正司氏はその理由をこう説明します。「高品質、適正価格、安定供給を実現する一貫生産・供給体制を構築できたことが成長の基軸になった」。価格競争に応じたのではなく、品質と供給の安定性という軸で勝負したのです。

特筆すべきは、現地適合に向けた戦略の徹底ぶりです。同社は「現地商品開発体制の構築」「現地生産体制の強化」「現地企業との共創によるソリューション提案」の3本柱を推進。日本の津工場から技術者を派遣して「ものづくり道場」「技術道場」「安全道場」を設置し、現地スタッフが日本品質を自ら生産できる仕組みを根付かせました。さらに、Nanocoグループを通じてベトナム全土21拠点に販売・倉庫・配達・アフターサービスの機能を持たせ、施工業者トラブルへの迅速対応で信頼を積み重ねてきました。2030年度には現地売上500億円を目指しており、まさに「翻訳ではなくローカライズ」を体現したBtoB戦略の好例です。

日系SaaS企業B社のウェビナー×代理店活用:半年で600件リード獲得

業務効率化ツールを提供する日系SaaSのB社は、ベトナム参入にあたって現地販売代理店を設け、月1回ペースのオンラインセミナーを共同開催しました。集客はLinkedIn広告と既存顧客ネットワークを活用し、テーマは「ベトナムにおけるDX導入成功のポイント」など現地企業の関心に即した内容に設定。この施策により、半年で約600件のリードを獲得し、うち約10%が商談に発展しました。

単に日本向けのサービスをそのままベトナムに持ち込むのではなく、「ベトナム企業が直面するDX課題」という文脈でコンテンツを組み直したことが成功の鍵でした。セミナー後のアンケートと個別相談の導線を設計したことで、「学び」から「導入検討」への流れを自然に作り出しています。製品訴求より価値提供を先行させる、という考え方がベトナム市場の商習慣とも合致していました。

ベトナムBtoBにおけるWebマーケティングの浸透と活用法

情報収集はWebへ、商談はオフラインへ

ベトナムのBtoB市場では、最終的な意思決定はオフラインの信頼関係を通じて行われますが、その前段階の「情報収集」はデジタルが主役になっています。ベトナムのインターネット普及率は急速に高まっており、BtoBの担当者もFacebook・Google・LinkedInを通じて製品・企業情報を集め、Zaloやメールで同僚に共有してから商談へと進む流れが定着しています。

在ベトナム日系企業にとって、この「デジタルで接点を作り、オフラインで信頼を積み上げる」という設計を意識することが、現地市場での成果に直結します。とりわけBtoB製造業の場合、購買担当者が展示会や商談の場に来る前にすでにWebで企業を調査済みであることが多く、Webサイトのコンテンツが「第一印象」を形成します。

ベトナムBtoBで有効なデジタルチャネルの優先順位

ベトナム市場で実際に成果が出ているデジタルチャネルを整理すると、次の順に重要度が高くなっています。

  • ベトナム語・英語対応の企業Webサイト:製造業の購買担当者がまず確認するのが公式Webサイトです。ベトナム語のコンテンツがない場合、現地担当者が社内で情報共有しにくくなり、意思決定プロセスから脱落するリスクがあります。「日本クオリティの何が、どうベトナムの課題を解決するのか」を現地語で明示することが最重要です。
  • Facebook(BtoBでも主要チャネル):ベトナム企業の公式Facebookページには製品情報・会社情報・ニュースが頻繁に更新されており、BtoBでも問い合わせが来るチャネルです。日系企業の中には社内にFacebook運用チームを置いたり、運用代行に任せているケースもあります。
  • Zalo(現地ビジネスコミュニケーションの要):ベトナム国産のメッセージアプリZaloは、BtoB商談後のフォローアップ、資料共有、リマインドなどに広く使われています。展示会や商談で名刺交換した後にZaloでつながることが、関係維持の起点になります。
  • Google広告・SEO:製品カテゴリで検索するベトナムの購買担当者にリーチするための手法です。ベトナム独自のCocCocブラウザも一定のシェアを持つため、現地SEOでは複数の検索エンジンへの対応が求められます。
  • 展示会との連動(ハイブリッド設計):Facebookでターゲット広告を事前配信し、展示会当日に「広告を見て来た」という来場者を集め、その後Zalo・メールでフォローアップ。半年以内に複数件の成約につなげる事例が生まれています。重要なのは、デジタルとオフラインをあらかじめ連動させて設計することです。

よくある質問(FAQ)

【質問】ベトナムの製造業バイヤーは本当に品質を重視していますか?価格が最優先ではないのでしょうか?

【回答】 製品カテゴリや取引先の規模によって異なりますが、製造業向けBtoBでは品質・供給安定性・アフターサポートが購買決定において大きな比重を占めます。JETROの調査でも、在ベトナム日系企業の競争対応策として「コスト削減」よりも「営業・広報の強化」や「製品の多角化・高付加価値化」が上位に挙がっており、価格だけで戦う企業は限界を迎えつつあるという実態が浮かび上がっています。パナソニックがベトナム配線器具市場でシェア5割前後を維持できているのも、「高品質・安定供給・迅速なアフターサービス」という軸で差別化しているからです。

【質問】ベトナム市場向けのWebサイトはベトナム語が必要ですか?英語だけでは不十分ですか?

【回答】 ベトナム語対応を強くお勧めします。現地のBtoBバイヤーが英語に堪能でも、上司への説明・社内回覧・社内プレゼンはベトナム語で行われます。英語のみのWebサイトでは、担当者が内部で情報共有しにくく、意思決定プロセスに乗りにくいのが現実です。また、ベトナム語対応はGoogleやCocCocによるベトナム語検索でのインデックス評価にも有利に働きます。注意すべきは「翻訳」ではなく「ローカライズ」であること。日本向けの文章をそのまま訳しても、ベトナムの顧客が直面する課題に響きません。現地の商習慣・ニーズに合わせた内容設計が必要です。

【質問】ベトナムBtoB営業で最初にやるべきことは何ですか?

【回答】 まず現地の信頼できるパートナー(代理店・ディストリビューター)の確保と、ベトナム語対応のWebサイト整備を並行して進めることをお勧めします。ベトナムでは「紹介」文化が根強く、パートナーを通じた商談は飛び込み営業と比べて成約率が大幅に高くなります。同時に、Webサイトが整備されていないと、パートナーが顧客に自社を紹介する際に信頼の証明ができません。展示会出展(JETROや日本商工会議所が支援するパビリオン参加から始めるのが低リスク)でネットワークを作りながら、Webで情報を発信し続ける体制を構築することが、ベトナムBtoB攻略の基本セットです。

まとめ:ベトナムで勝つのは、価格ではなく「信頼の設計」が上手い会社

ベトナム製造業向けBtoB市場は、単純な低価格競争の場ではありません。「品質」「安定供給」「アフターサービス」「信頼できる人・企業からの紹介」──これらの価値を丁寧に伝え、積み重ねていくことが、中国・韓国・地場企業との競争で優位に立つ唯一の王道です。

そしてその価値訴求の入口を担うのが、ベトナム語でローカライズされたWebサイトと、現地の商習慣に合ったデジタルマーケティングの設計です。パナソニックのような大企業が数十年かけて築いた現地ブランドを参考にしながらも、中小企業でも市場適合を早期に実現する方法は確かに存在します。

ベトナム向けの多言語Webサイト制作や、現地にローカライズしたコンテンツ設計に取り組むなら、Leapのサービスをぜひご覧ください。翻訳ではなくローカライズ──ベトナム市場での価値訴求を、Webから設計する第一歩をご一緒できることを楽しみにしています。


参考資料・出典一覧

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