「日本語の価値を、世界から届ける」── 海外拠点から日本市場へ挑む起業家が語る、AI時代のグローバル発信戦略
#AI #LinkedIn #海外起業 #日本語コンテンツ #グローバルマーケティング 2026年06月19日 読了時間:約10分
KOTOBAAI Pte. Ltd. Founder。2020年に株式会社サイバーリーチを創業し、SNSマーケティングおよびLinkedIn発信支援を中心に活動。経営者・CXO向けの情報発信支援を手がけながら、多くの企業の採用・営業課題に携わる。2025年10月にシンガポール法人KOTOBAAI Pte. Ltd.を設立。現在は東南アジアを拠点に、海外リーダー向けの日本語コンテンツ生成AIプラットフォームを開発中。
海外から日本市場へ向けて発信したい──そのニーズは、インバウンド需要の拡大とともに急速に高まっている。グローバルリーダーが日本での採用や営業を進めようとするとき、立ちはだかるのが「伝わる日本語」の壁だ。 この課題に正面から向き合っているのが、石出裕美さんだ。2020年のコロナ禍に日本で起業し、SNSマーケティングやLinkedIn発信支援を展開。その後、シンガポール法人を設立し、東南アジアを拠点に海外リーダー向けの日本語投稿生成AIサービスを開発している。 今回は、海外でビジネスを始めようとしている中小企業の経営者・海外担当者に向けて、石出さんにそのビジョンと実践の詳細を伺った。
起業の原点は「自分ができることから始める」
── 最初の起業は、どのような経緯だったのでしょうか? コロナがちょうどバタバタし始めていた2020年に、株式会社サイバーリーチを立ち上げました。ウェブマーケティングが自分にできることだったので、「まずできることで始めよう」というのが出発点でしたね。大きなビジョンからというより、目の前にある自分のスキルを活かすことが先でした。 そこからSNS運用やLinkedIn発信支援を続けていく中で、多くの経営者の方と向き合う機会を得ました。特に印象に残っているのが、40〜50代の男性経営者の方々です。スキルも実績も十分にある方ばかりなのに、「何を書けばいいかわからない」「発信が続かない」「自分らしい言葉で伝えられない」という悩みを抱えていた。 私は、単にフォロワーを増やしましょうとかバズらせましょうというアプローチではなく、「何のために発信するのか」という目的から逆算して支援していきました。採用を強化したいのか、新規営業のきっかけをつくりたいのか、そこから一緒に考えていくやり方です。結果として「やってよかった」と言っていただける方が増えていき、やりがいを感じていました。
人力支援の限界と、AIへの着目
── そこからなぜ、AIプロダクトの開発に向かったのでしょうか? 1対1の運用代行や発信支援には、どうしても限界があります。私自身が関われるクライアント数は限られていますし、スケールしない。そこに加えて、最近LinkedInを見ていると、英語で書かれた長文投稿の半分以上がAI生成ではないかというデータも出ていて、実際に見ていても「確実に増えたな」と感じています。 ただ、問題はその質です。AIで大量の文章を出すことはできても、どこか日本語が不自然だったり、誰が書いても同じような文章になってしまっているケースが少なくない。 AIの使い方は二極化すると思っています。「早く大量にそれっぽいものを出す」か、「AIを使って自分らしさ・ビジョン・会社のミッションをちゃんと伝える」か。後者を実現するプロダクトが今はまだない。だから自分で作ろうと思いました。
開発中のサービス「Japanese-Language Post Generation」とは
── 具体的にどのようなサービスなのか教えてください。 海外のグローバルリーダーや経営者が、日本市場向けに「伝わる日本語」でLinkedIn投稿を発信するためのAIプラットフォームです。 使い方はシンプルです。まず登録してオンボーディングで「何のために発信するか」を入力してもらいます。そこから先は、アプリが「最近あった出来事は何ですか?」という最初の問いを提示します。たとえば「昨日お客さんと話して気づいたこと」を入力すると、そこからAIが追加の質問を3〜5問生成します。「具体的にどんな反応がありましたか?」「印象に残った出来事は?」といった深掘りの質問に答えていくと、最終的に日本語の投稿案が3パターン出てきます。 思いを引き出しながら、日本市場に届く言葉に変換するという設計です。チャットGPTに文章を貼り付けて「日本語に直してください」とやるような単純な翻訳とは、根本的に発想が異なります。まず「その人が何を感じ、何を伝えたいのか」を対話を通じて掘り起こす。その上で、日本市場のビジネス慣行や読者の感覚に合った言葉へと整えていく。プロセス全体が、翻訳ではなく「言語化の支援」として設計されています。結果として生成される投稿は、誰が書いても同じような汎用的な文章ではなく、「その人の言葉」として日本語で伝わる形になることを目指しています。 このサービスはもともと、私が自分の投稿やコンサルティングの現場で2年ほど試行錯誤してきたプロセスが元になっています。どういうプロンプトで、どういう問いかけをすれば、その人らしい言葉が出てくるのか。その蓄積をアプリ化したものです。
「伝わる日本語」が採用・営業の決め手になる理由
── なぜ特に日本語に特化したのでしょうか? 採用にしても営業にしても、最終的な「決め手」はやはり言葉だと思っています。いくら記事が面白くても、どこか不自然だったり、誰でも書けそうな文章だと最後の一押しにならない。 特に海外企業が日本市場に向けて発信する場合、正しい日本語というより「思いが伝わる日本語」が重要です。たとえば、シンガポールの企業が日本人材を採用したいとき、日本語でどう発信するかで面談率が大きく変わります。スカウトをDMで送るだけでは決まりにくい。でも、その企業のリーダーが自分のビジョンや職場の文化を日本語で丁寧に発信していれば、信頼につながり、応募率も変わってくる。 営業でも同じです。日本の取引先・顧客に向けて「この人の言葉だ」と感じてもらえる発信ができるかどうかが、最終判断に影響する場面は確実にあります。
「大きくすること」より「遺すこと」
── 今後の事業展望をどのようにお考えですか? 「残すべき言葉を未来に残す」ことに動機があります。 日本語は単なるコミュニケーションツールではなく、文化そのものだと思っています。それを大事にしてくれるAIツールがない状態が続けば、日本語で発信する人はどんどん減っていく。言葉自体が消滅していく可能性すらある。長い軸で考えると、それは避けたい。 だから、日本語で伝えたいと思っているリーダーが世界中にいるなら、そのための仕組みを作りたい。規模より、必要な人に届けることを優先しています。 ローンチは2026年7月5日を予定しており、まずは招待制で限られたユーザーからスタートします。フィードバックを受けながら機能を磨いていく計画です。
海外進出を検討する中小企業へのメッセージ
── 最後に、海外ビジネスを始めようとしている経営者・海外担当者の方へアドバイスをいただけますか? 私自身の経験から言うと、「海外に出よう」と大きく決意しなくても、気がついたら海外で仕事をしていたというケースは多いと思います。LinkedInをはじめとするプラットフォームで、海外のビジネスパーソンと少しずつつながりを作っていけば、自然と選択肢が広がっていく。 日本の中小企業が海外市場にアプローチするとき、最初のハードルは「言葉」と「信頼」です。英語ができないから無理だと感じている方も多いですが、今はツールで補える部分が増えています。問題は言語よりも、「何を伝えたいか」「誰に伝えたいか」が明確かどうかです。 そして、発信に関していえば、「自分らしい言葉で継続して伝える」ことが、最終的に採用・営業のどちらにも効いてきます。バズることより、信頼を積み上げること。海外でも日本でも、それは変わらないと思っています。
KOTOBAAI Pte. Ltd.
海外のビジネスリーダーに向けた「伝わる日本語」での発信支援を提供。グローバルリーダー向け日本語コンテンツ生成AIプロダクト「Japanese-Language Post Generation」(ベータ版・招待制)の開発・提供を主軸に、個人の戦略設計から投稿実行まで伴走するLinkedIn発信支援、および創業期の経営者向けの壁打ち・リバースメンタリング(経営相談)も手がけています。
- 所在地
- Singapore
- 設立
- 2025年10月12日
- 登記番号
- UEN: 202545511W
- 事業内容
- 日本語コンテンツ生成AI「Japanese-Language Post Generation」、LinkedIn発信支援、経営相談(壁打ち・リバースメンタリング)
- お問い合わせ
- info@kotobaai.ltd
- 公式サイト
- kotobaai.ltd
この記事について
この記事はLeap編集部が取材・構成しました。Leapは、海外展開を検討する日本の中小企業向けに、AIエージェントを活用した多言語ウェブサイト制作・ECサイト構築・グローバルマーケティング支援を提供するSaaSプラットフォームです。国内での事業基盤を活かしながら、海外市場への最初の一歩を踏み出す経営者・海外担当者向けに、EC運営から越境展開まで幅広い実践的コンテンツを継続発信しています。