海外マーケティング

海外パートナー経由の売上が伸びない本質的理由── エンドユーザーマーケの必要性

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Leap 編集部
Leap 編集部
海外ビジネスのエキスパートチーム
海外パートナー経由の売上が伸びない本質的理由── エンドユーザーマーケの必要性

【1分で解説!】パートナー頼みの海外展開が行き詰まる構造と、その打開策

海外市場への進出を図る多くの中小企業が、現地の代理店やディストリビューターに販売を委ねる「パートナー経由モデル」を選択します。初期コストを抑えながら参入できる合理的な戦略ですが、数年後に「売上が伸びない」「パートナーが積極的に動いてくれない」「エンドユーザーが自社製品を知らない」という壁に直面するケースが後を絶ちません。

本記事では、BtoBtoBモデルが持つ構造的な問題を整理し、エンドユーザーへの直接コミュニケーション戦略がなぜ不可欠であるかを解説します。建設機械大手コマツとマーケティングSaaSのHubSpotという二つの実例を取り上げながら、パートナー連携を維持しつつエンドユーザー認知を高めるための具体的な戦略の方向性をお伝えします。パートナーマーケティングと直接施策は対立するものではなく、相互に強化し合う関係にあります。

「パートナーに任せれば大丈夫」という幻想

海外進出における最初のパートナー選定は、多くの企業にとって大きな期待を伴うプロセスです。現地の商習慣に精通し、既存の顧客ネットワークを持つパートナーに販売代行を委ねることで、自社単独では難しい市場への足がかりを得ることができます。しかし、契約から数年が経過しても売上が低迷したままというケースは、決して少なくありません。

「パートナーが熱心に売ってくれない」「競合製品の方が優先的に紹介されている」「そもそもエンドユーザーが自社ブランドを認識していない」──こうした悩みを抱える企業の多くが見落としているのは、パートナー経由モデルの構造そのものに内在する問題です。

パートナーは通常、複数のメーカーやサービス提供者の製品を扱っています。その中でどの製品を優先するかは、マージン率・販売のしやすさ・顧客からの引き合いの多さといった要素によって左右されます。つまり、あなたの製品・ブランドの認知度が低ければ、パートナーとしても積極的に売りにくい状況が生まれます。この構造を理解せずにパートナーだけに依存し続けると、売上の伸び悩みはほぼ必然的に発生します。協業戦略を長期的に機能させるには、この前提を整理しておくことが不可欠です。

BtoBtoBモデルの構造的な落とし穴

パートナーのインセンティブはあなたの利益と一致しない

BtoBtoBとは、製品・サービスを提供するメーカー(自社)→ 代理店やディストリビューター(パートナー)→ エンドユーザーという流通構造を指します。この構造において根本的な問題となるのが、各プレイヤーのインセンティブが必ずしも一致しないという点です。

自社にとっての目標は「自社製品の売上最大化とブランド認知の向上」です。しかしパートナーにとっての目標は「パートナー自身の売上最大化」であり、それはあなたの製品に集中することを意味しません。特に東南アジアや東アジア市場では、一つのディストリビューターが数十から数百社のブランドを扱っていることも珍しくなく、あなたの製品はその中の「一つ」に過ぎない場合がほとんどです。

また、価格交渉力の問題もあります。エンドユーザーがブランドをよく知らなければ、パートナーは「どのブランドでもいい」という状況の中で、自社マージンを最大化できる製品を提案します。結果としてあなたの製品は後回しにされ、あるいは競合製品に代替されるリスクが高まります。パートナー連携の実効性を高めるためには、この非対称性を前提に戦略を組む必要があります。

エンドユーザー不在が生む「ブラックボックス」

パートナー経由モデルのもう一つの問題は、エンドユーザーに関する情報がほとんど得られないことです。誰が使っているのか、どのような課題を抱えているのか、満足度はどうか──これらの情報がパートナーに遮断された状態では、製品改善もマーケティングメッセージの最適化も困難になります。

さらに深刻なのは、エンドユーザーの中に「あなたの製品を使っていることすら認識していない」ケースが存在することです。パートナーが「特定メーカーの製品」ではなく「パートナー自社ブランドのソリューション」として販売していれば、あなたのブランドはエンドユーザーに届きません。これは海外での協業戦略において、長期的なブランド資産の毀損につながります。BtoBtoBの構造的な問題を解消するには、エンドユーザーへの直接接点を意図的に設計することが必要です。

実例に見る:エンドユーザー直接マーケティングの威力

コマツ── ディーラー網を維持しながらエンドユーザーとデジタルでつながる

建設機械大手のコマツ(株式会社小松製作所)は、世界中のディーラー(代理店)を通じて製品を販売するBtoBtoBモデルを採用しています。しかし同社は2000年代初頭から、KOMTRAX(コムトラックス)と呼ばれる独自のIoTシステムを建設機械に搭載し、GPS情報・稼働時間・燃料消費などのデータをコマツが直接収集できる仕組みを構築しました。

このシステムにより、コマツはディーラー経由の販売モデルであっても、稼働データに基づいたメンテナンス提案やオペレーションアドバイスをエンドユーザーである建設会社に直接提供できるようになりました。エンドユーザー側からすれば「コマツが直接サポートしてくれる」という感覚が生まれ、ブランドロイヤルティが大幅に向上しました。ディーラーとの関係を損なわずに、エンドユーザーとの直接コミュニケーションを実現した実例です。海外展開におけるパートナーマーケティングの構造的な限界を、テクノロジーと情報設計の力で乗り越えたモデルとして、多くの業界で参照されています。

HubSpot── パートナーエコシステムとエンドユーザー向けコンテンツ戦略の両立

マーケティング・CRMツールを提供するHubSpotは、世界6,000社以上のパートナー代理店(HubSpot Solutions Partners)を通じてサービスを販売する、パートナーマーケティングの代表的な事例です。しかし同時にHubSpotは、自社ブログ・無料ツール・オンライン学習プラットフォーム「HubSpot Academy」などを通じて、エンドユーザーである企業のマーケターや営業担当者に直接コンテンツを届け続けています。

「インバウンドマーケティング」という方法論をHubSpotが積極的に発信し、そのメソッドを学ぼうとするユーザーが自然とHubSpotのウェブサイトを訪れる構造を作り出したことは、パートナー連携と直接エンドユーザー施策の両立を体現した事例として広く評価されています。パートナー経由で製品が紹介された際、エンドユーザー側がすでにHubSpotブランドを認識・信頼しているため、成約率・継続率ともに高い水準を維持しています。これはパートナーにとっても「売りやすい製品」になるという好循環を生み出しています。

パートナー連携を活かしながらエンドユーザーに届く戦略

現地語ウェブサイトによるプル型の認知獲得

エンドユーザーへのアプローチで最もコストパフォーマンスに優れた手段の一つが、現地語に最適化されたウェブサイトの構築です。東南アジア・東アジア・アメリカのいずれの市場においても、エンドユーザーは製品・サービスを検討する際にインターネットで情報収集します。現地語で書かれた情報が検索上位に表示されることが、認知獲得の第一歩です。

重要なのは、単純な翻訳ではなく「現地のユーザーが何を検索し、何を知りたいか」を踏まえたローカライズされたコンテンツを用意することです。たとえばアメリカ市場向けであればROIや導入事例へのニーズが高く、東南アジア向けであれば価格帯やサポート体制に関する情報が重視される傾向があります。こうした現地ユーザーのインサイトに基づいたウェブページが存在することで、エンドユーザーが「この製品を使いたい」と自発的にパートナーへ問い合わせをするプル型の流れが生まれます。パートナーにとっては、あなたのウェブサイトが自然な引き合い創出装置として機能することになります。

コンテンツマーケティングで長期的なブランド資産を築く

ウェブサイトに加え、ブログ記事・導入事例・ハウツーコンテンツといった継続的なコンテンツ発信も、エンドユーザーとの関係構築に大きく寄与します。特にBtoBの購買プロセスでは、購買サイクルが長く意思決定に関与する人数も多いため、「検討段階から信頼を積み上げる」アプローチが有効です。

海外における協業戦略の観点から見ても、エンドユーザーへの情報発信はパートナーとの関係を補完するものです。エンドユーザーがコンテンツを通じてブランドを認知・信頼し始めることで、パートナーにとっても「売りやすい製品」に変わっていきます。パートナーマーケティングと直接コミュニケーションは競合するものではなく、互いを強化し合う関係にあります。エンドユーザーへの直接発信を一つの経営判断として位置づけることが、BtoBtoBモデルで海外売上を安定的に伸ばすための本質的なステップです。

よくある質問(FAQ)

【質問】パートナーとの関係を壊さずにエンドユーザーに直接アプローチできますか?

【回答】 可能です。重要なのは「パートナーを迂回して売る」のではなく、「エンドユーザーの認知・教育をメーカー自身が担い、パートナーの販売活動を後押しする」という立ち位置を取ることです。ウェブサイトや教育コンテンツによる情報発信はパートナーの活動を脅かすものではなく、見込み客の質を高め、クロージングをしやすくするものです。事前にパートナーとコミュニケーション方針を共有しておくことで、協業戦略としてのシナジーが生まれます。

【質問】現地語ウェブサイトの構築には、どれくらいのコストと期間がかかりますか?

【回答】 従来の方法では、現地語サイトの構築には翻訳・デザイン・開発それぞれの専門会社を組み合わせる必要があり、数百万円規模の初期投資と数か月の制作期間が必要なケースもありました。ただし近年は、ローカライズに特化したSaaSツールを活用することで、コストと期間を大幅に削減できるようになっています。初期費用を抑えながら現地ユーザーに最適化したページを展開し、PDCAを回しながら改善していくアプローチが現実的です。

【質問】パートナー依存度が高い現状から、どこから手をつければよいですか?

【回答】 まず取り組むべきは「現状の把握」です。パートナー経由の売上に、どのようなエンドユーザーが存在しているかを把握するための情報収集から始めましょう。次に、エンドユーザーが検索する可能性の高いキーワードを調査し、現地語でのウェブページやコンテンツを最低限整備します。既存のパートナー販売体制を変える必要はなく、「エンドユーザーに届く接点を一つ作ること」が第一歩です。リスクを低く抑えながら始められる点も、この戦略の現実的な強みです。

まとめ

海外パートナー経由の売上が伸び悩む根本的な原因の多くは、パートナーの構造的なインセンティブのズレと、エンドユーザーへの情報遮断にあります。BtoBtoBモデルを採用している以上、パートナーだけに頼る姿勢を続ける限り、ブランド認知の構築は困難です。

コマツがKOMTRAXを通じてディーラー経由モデルを超えた直接接点を確立したように、またHubSpotがパートナーエコシステムと並行してエンドユーザーへの直接コミュニケーションを実現したように、構造的な問題を理解した上で戦略を設計することが長期的な成長の鍵です。

現地語ウェブサイトとコンテンツマーケティングを通じてエンドユーザーに届く仕組みを作ることは、パートナーとの関係を損なわずに売上を伸ばすための、最も現実的なアプローチです。Leapでは、現地ユーザーのインサイトに基づいてローカライズされたウェブページとコンテンツを効率的に構築できる環境を提供しています。東南アジア・東アジア・アメリカ市場への展開を検討されている方は、ぜひLeapのサービスページをご覧ください。

参考資料・出典一覧

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